その1 個人サロンがつぶれるワケ
~集客ノウハウとエステ業界の現状~

集客ノウハウ不足
女性の企業家が増えるにつれて、エステティシャンによる開業も増えています。日々、個人のサロンがオープンする一方で閉店を余儀なくされるおサロンも増えています。閉店に追い込まれてしまう理由とは何なのでしょう? 

<Aさんの場合>
経験を積んで、たくさんのお客様もついて、売上も常にトップだったAさん。Aさんは次第に独立を考えるようになりました。まずは開業資金を貯めてから、とAさんはお金を貯めるまでは店を辞めませんでした。その間、あらゆる技術を磨いて、一人でもやっていけるように接客にも力を注ぎました。そして準備期間を経てオープンまでこぎつけました。ところが開業後、どうやったらお客様を集めたらよいのか、まったくノウハウがないことに気付きました。これまでついたお客様には限りがあり、また、以前働いていたサロンでは機械や内装が充実していましたが、個人でオープンした店では同じような設備を導入することができず、せっかくの技術も思うようにふるうことができませんでした。人を集める方法を勉強していなかったAさんはオープンして数カ月後、やむなく店を閉めたそうです。何が足りなかったのでしょうか。

Aさんは自分には<集客のノウハウ>が欠けていたと言っていました。
そうです。Aさんは経営者になるというのに、経営する上で必要なマーケティングやマネージメントについて、全く勉強をしていなかったのです。
男性の起業家は比較的、経営やマネージメントについて勉強してから起業するのに比べ、女性の起業家は勉強不足のまま起業してしまうケースが多いといわれています。Aさんの場合も、集客について、オープンしてしまえばどうにかなると気軽に考えていました。

人手不足問題
もう1つ、サロンを運営する上で知っておかなければならないことがあります。それは、エステティック業界の現状です。
ストレスを抱え、エステサロンに癒しや健康を求める人が増加する一方で、各店舗は人手不足に悩まされています。スタッフを複数必要とするサロンでは、新人が入れば店の技術、接客方法などさまざまなノウハウを教えます。しかしこの教育にかかる時間と労力はかなりのもので経費がかさみます。けれど、最近では教育してもすぐに辞めてしまうケースが後をたちません。その原因は何なのでしょうか。

<店を辞める原因>
技術を習得して自分でサロンを開業するために辞める
サロン内の密な人間関係に疲れて辞める
お客様の次の予約を取るように店長からきつく言われるのがイヤになる
物販の販売ノルマが厳しい
働きに見合う給料の額

女性の場合、結婚や出産、育児など、女性ならではの理由により長く働けないという問題も抱えています。

辞める理由の中で、お客様の次の予約を取るように強制されたり、化粧品を売るように言われること、というのがありますが、この行為がエステサロンのイメージを下げることがあります。エステティシャンが次回の予約を勧めたり、化粧品を販売するのは施術後の肌を維持するためなのですが、サロンの売上にも直結するため、半ば強制のように毎回しつこくお客様に勧めるサロンがあります。そのためにお客様が店離れしたり、スタッフが物販営業で疲れてしまうことがあります。
ちなみに、店の売上を維持するためには、個人の経営する店では自分の給料の5~6倍もの売上をたてなければなりません。また、大手のサロンでは一人10倍もの売上をたてないと店を順調に運営することはできません。経営者はサロンを存続していくためにこの売上を維持するほかにはないのですが、売上のために教育したスタッフが辞めてしまうのでは本末転倒です。スタッフが辞めないような環境づくり、長く働ける工夫をしなければ、いつまでたっても新人教育に無駄な費用がかかるだけです。